賃貸併用住宅の共有は避けたい?相続トラブルを防ぐための知識

相続で賃貸併用住宅を共有した場合、将来、様々なトラブルが起こる可能性があります。
例えば、共有者の生活状況が変化し、他の共有者に経済的な負担を求めるケースや、不動産の価値が変動して分割の方法で意見が食い違うケースなどです。
この記事では、賃貸併用住宅の共有が引き起こすトラブルと、事前にできる対策について解説します。

賃貸併用住宅を共有している場合

遺産相続では、親が所有していた土地や建物などを兄弟で共有名義にするケースはよくあります。遺産のうち不動産の比率が大きく共有が避けられない場合や、親と同居している子どもがいれば売却するのが難しいということもあるでしょう。
けれども不動産の共有には思わぬリスクがあります。例え相続人同士の関係が良好で相続した時点では問題がなかったとしても、時間の経過によって状況が変わる場合もあるからです。

70代の姉弟の例をお話しします。
2人は20年前に父親から賃貸併用住宅を相続し、共有名義にしました。弟は家を出て1人でマンションに住んでいましたが、姉は父親が亡くなったあともその家の1階に住み、2階を賃貸にしています。

相続時、弟は自営業をしていたのですが、最近になって体調を崩し仕事ができなくなりました。収入が激減しため生活に困窮し、姉に「共同名義の不動産なので、俺には2分の1の権利がある」と、2つの要求をしてきたのです。
その要求とは、「同居」するか「現在住んでいる家賃の補助」でした。
ただ財産を相続した20年前に、姉の方から提案した同居を弟が拒否した経緯があります。そのため2人の関係は決して良好とは言えず、姉は弟からの要求をどちらも拒否しました。

共有分割請求で思わぬ問題が発生することも

この場合、弟には民法256条による「共有分割請求」という、共有物の分割請求ができる権利があります。
具体的には、現物分割、価格賠償、代金分割の3つです。どういった方法なのか、リンゴを例にとってお話ししましょう。

AさんとBさんが50円ずつ出して、1つのリンゴを買いました。
このリンゴを2人で分けて食べる。これが現物分割です。
次に価格賠償。
AさんがBさんに「分けて食べましょう」と言ったけれど、Bさんは「もういらないよ」となった。そこでAさんがBさんから50円で買い取りました。これが価格賠償です。
最後に代金分割。
AさんもBさんも、リンゴを食べたくなくなった。そこで第三者であるCさんに100円で売り、その代金を2人で50円ずつ分けました。これが代金分割です。

このリンゴを賃貸併用住宅に置き換えて、姉弟にはどのような方法があるか、考えてえてみましょう。
対象物が建物の場合、物理的に2つに分けるのは難しい。ですから現物分割は無理です。
価格賠償は、お金を払って買い取ること。この物件は約1億円の価値があります。実はローンの残債が2,000万円くらいありましたが、その点を差し引いても価値は8,000万円ほど。そこで姉は4,000万円を支払うことになります。
ところが、姉が「4,000万円なんて払えない」ということになれば、代金分割をするしかありません。不動産を売却して、そのお金を2人で分けるのです。
ただ、そうなると姉は現在住んでいる家を、出て行かなければならないかもしれません。住むところがなくなってしまう可能性があるのです。

これは一例に過ぎませんが、不動産の共有にはさまざまなリスクがあります。ですから不動産の共有には注意が必要です。特に遺産相続の場合は時間の経過を含めて、起こり得ることを考えて対策してください。

この記事は女性専用アパート「プリマ」HPのブログから転載させていただきました。
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記事を書いた人:飯田茂幸

司法書士。リーガルオフィス白金代表。 日本メンタルヘルス協会基礎心理カウンセラー。 司法書士事務所、法律事務所で研鑚を積み、2011年「リーガルオフィス白金」を開設。相談者のクレームから「傾聴」の大切さを学び、カウンセリングを勉強する。経営理念は「PEACE & HARMONY 安心で調和のある社会に貢献します。」