空室問題解決への道 ~ 大家さんが陥りがちなパターンと成功のポイント ~

大家さんにとって空室対策は常に頭を悩ませる課題です。入居者が退去してしまい、次の入居者を探す過程で価格交渉やリノベーションを検討することはよくあります。しかし、中には思わぬ機会損失に直面することもあります。

本記事では、通常の大家さんが陥りがちな空室対策の失敗例を紹介し、その結果起きる機会損失について考えてみます。空室問題を解決するためには、どのような新しいアプローチが必要なのか、成功へのポイントを見つけ出しましょう。大家さんが失敗から学び、効果的な戦略を見つけるためのヒントを探っていきます。入居者にとって魅力的な物件を提供し、空室対策に対する新たな知恵を身につけましょう。

管理会社から、「所有マンションの201号室の入居者様が、今月をもって退室します」との知らせが来ました。
担当者は言います。
「こういう時代だから、70,000円の家賃を5,000円くらい下げて次の募集をしましょう」
大家さんは、値下げはしたくありませんよね。ですから
「少しリノベーションをして、家賃を上げるか、せめて現状維持はできないの?」と言いました。ところが、管理会社の回答は、こうです。
「いえいえ、この地域の家賃はワンルームで70,000円前後ですから、何をやっても無理ですよ」

管理会社の視点でだけでは、機会損失につながりかねない

そう言いながらも、工事会社を行かせるので部屋が空いたら見せてほしいとのこと。求めに応じて、空いた部屋を見せた数日後のことです。

「この間工事会社が見たところ、壁のクロス貼り替えとキッチン交換をしたほうが良いようですね。この中から選んでください」
そう言って見せられたのは、薄っぺらいカタログです。壁紙もキッチンもワンパターンで、選択肢の少ないものでした。
それでも大家さんは、空室を埋めたくて工事をすることにしました。

それから3ヵ月後の、大家さんと管理会社担当者のやりとりです。

大家さん「3ヶ月経ったけど入居者がまだ決まらない。どうなっているの?」
担当者「頑張っているのですが、新しい物件もたくさん建ちましてね…。なかなかこの地域は難しいんですよ」
大家さん「オヤジの代からずっと付き合っているんだよ。なんとかしてよ」
担当者「 はぁ… 頑張っているのですが…」
大家さん「もっと頑張ってよ」
担当者「…じゃ、もう少し、家賃を下げましょうか?」
大家さん「えっ、また下げるの…? でもそうしたら確実に決まるんだろうね?」
担当者「 いえ、それはやってみなくてはわかりません……」

こんな押し問答があったものの、物件は10ヶ月、空室のままでした。65,000円×10ヶ月=650,000円の機会損失です。
もっと他に方法はなかったのでしょうか。

このパターンには、大きな間違いがあります。

差別化されない物件は、埋もれていくだけ

新しい入居者を獲得するために、クロスを貼り替え、キッチンを入れ替え、そして家賃を5,000円も下げました。それなのに、物件は10ヶ月空いてしまいました。いったい何が悪かったのでしょうか?

一番の間違いは、大家さんは「なるべくお金はかけないように」、管理会社は「この物件だけ特別扱いはできない」との考えから始まり、双方の押問答となっていたからではないでしょうか。
そして結果的に、「当たり障りのない物件」になってしまったのです。このような物件は世の中に乱立しています。
家賃が高ければ安い物件に負け、部屋が狭ければ広い物件に負け、駅から遠ければ近い物件に負け……。もうキリがありません。

要するに差別化されてない、当たり障りのない物件は埋もれてしまうのです。世の中には埋もれていく物件が、どれほどあることか……。

カテゴリーとコンセプトによる差別化が重要

それではどうすれば差別化ができるのでしょうか?
それは「お金を払ってくれる人に喜んでもらう」という、商売の原点を、しっかり考えることです。

お金=家賃
払ってくれる人=入居者様

「駅から遠くても、家賃が少し高くても、こんな環境の、こんな建物に私は住みたい」と思わせる作品になっているか。それが、長期に渡って安定した経営をするために、必要だと思うのです。

ファッションの提案も、車やお菓子などの物品販売も、さまざまなサービスの提供も、対象者を具体的にイメージし、ターゲティングして商品を開発します。賃貸業もサービス業です。

「誰に」住んでもらうか=カテゴリー
「どんな生活」をしてもらいたいか=コンセプト

それを、まずは考えるべきだと思うのです。この考え方は、新築でもリノベーションでも、かわることはありません。
そして、これが成功大家さんの基本中の基本といえる考え方なのです。

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この記事は女性専用アパート「プリマ」HPのブログ(1) (2)から転載させていただきました。
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記事を書いた人:石川 龍明

「横濵快適住環境研究所」代表、不動産活用コンサルタント。賃貸経営で一番問題となる『空室対策』のプロフェッショナルとして、多くの地主・家主・資産家様の悩みや問題点を解決。全国でセミナーを開催するほか、リノベーションブランド『DRAGON VINTAGE』などのプロデュースを手がける。ニックネーム 龍(りゅう)さん。http://www.shin-chintai.com